謎の植物を写真で同定してみたらなかなかの外来種だった【ハワイ編】

土地にはさまざまな植物が自生しています。

そのほとんどはストロベリーグアバのような外来種ですが、最近、頭角を現してきたのがこの謎の木。

 

謎の木の特徴

樹齢:約4年

樹高:約7メートル

葉の長さ:約30センチ

花や実:未確認

日照条件:直射日光下で生育良好

 

果たしてこの植物はハワイの固有種なのか、はたまた外来種なのか?

たとえ外来種でもおいしい果実をつけるなら良いのですが、そうでなければ切ってほかの果樹を植えたいのが正直なところ。

 

Googleの画像検索で探してもわからなかったので、画像から植物を同定してくれるサイト Pl@ntNet を使ってみました。

※アプリ版もあります。

まずはサイト中央にある「add / drop an image」ボタンに、同定したい植物の画像をドラッグ・アンド・ドロップ。

画像がアップロードされると、植物の候補が表示されます。

アップした画像と関連性が高い植物から順に表示されます。

一つずつ確認してみた結果、これだというものが見つかりました!

意外にも関連性が二番目に高い植物で、植物の学名は Alstonia macrophylla

そして通称名はなんと Devil tree(悪魔の木)!

植物のページには写真、分布や開花期などのおおまかな情報が記載されています。

一体 Devil Tree とはどんな木なのか?

もう少し詳しく知りたいので、今度は学名を有用熱帯植物データベース「Useful Tropical Plants」で検索にかけます。

情報がありました!

このサイトによると、Devil tree は

  • 樹高30〜50メートルに生長する樹木。
  • 真っ直ぐな幹は5メートル以上も枝がなく、直径は100cmにもなる。根元には溝や小さな板根が発達する。
  • この木は、主に薬や木材の原料として野生から収穫される
  • IUCNのレッドリスト(2013年)では「低危険種(Least Concern)」に分類される
  • 生育地は中国、スリランカ、アンダマン・ニコバル諸島、タイ、カンボジア、ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ニューギニア。
  • この木は、雑草になる可能性が高い。
  • スリランカを含むいくつかの地域では、栽培していたものが野生化している。ハワイやセイシェルなど、いくつかの地域では侵略的と記録されている
  • 樹皮は、粉末、煎じ薬、煎じ液、チンキ、酒などの形で、抗アメーバ剤、抗コレラ剤、抗腸剤、抗マラリア剤、生理用品、黄精剤、解熱剤、強壮剤、脆弱剤として用いられる。樹皮を削ったものを水に混ぜて飲むほか、頭痛を和らげるために額を洗うのにも使う。樹皮を粉末にして水に混ぜ、皮膚病に用いる。肺や耳の病気治療のために若葉は煎じて飲まれることも。
  • 木材は硬いアルトニアとして利用される。建築用、家具、床材などに使われる。

 

どうやらおいしい果実はつけないようです。泣

それも「ハワイでは侵略的外来種として記録されている」ですと!

せっかくなのでどの程度ヤバい侵略的外来種なのか調べてみましょう。

 

というわけで次に向かったサイトは「Plant Pono」。

外来種の危険度をスコア化してくれるサイトです。

外来種と一口に言っても色々ですが、繁殖能力が異常に高いもの在来種や周辺環境に悪影響を及ぼすものは、栽培を避けたり、積極的に除去することが推奨されています。

 

とはいえ現在、ハワイでは外来種の販売に関する法律は存在しません。

そこでこのサイトでは、外来種をその危険度に応じてスコア化し、栽培を避けるよう呼びかけているわけです。

それが Plant Pono(正しく植える)というサイト名にもつながっています。

 

前置きが長くなりましたが、例の Devil tree を検索すると以下の結果が表示されました。

スコアは9でHigh Risk(高リスク)と表示されました。

危険度が高いものほど数値は高く、高リスクと表示されます。

まずは Hawaiʻi-Pacific Weed Risk Assessment(ハワイパシフィック雑草リスク評価)を用いて、植物のバックグラウンドチェックを行い、植物の生態や歴史に関する49項目の質問が行われます。質問の中には次のようなものがあります。

  • この植物は他の地域に侵入していないか?
  • この植物は密集した雑木林を形成するか?
  • 種子はどのように広がるか?
  • 除草剤に耐性があるか?
  • 種子の生存期間はどのくらいか?
  • その植物はどれくらいの数の種を作るのか?
  • 植物が繁殖期に達するまでの期間は?

質問には公表されている情報を用いて回答するため、評価に偏りがなく、プロセスの透明性と再現性を保つためにすべての参考資料が提供されます。各質問は重み付けされ、回答に応じてスコアが与えられます。すべての質問の合計である結果には、Low Risk(低リスク)、Evaluage(評価;評価を完了するために十分な情報が得られない)、High Risk(高リスク)と表示されます。

スコア評価の詳しい方法について:What is the Hawai’i Pacific Weed Risk Assessment :: Plant Pono

 

なお、同ページの「Download Assessment」ボタンをクリックすると評価スプレッドシートがダウンロードでき、このスコアの判断に至った詳細が読めます。

Devil tree のスコアが 9 と評価されたのは以下のような理由からだそうです。

  • 自生範囲を超えて野生化している
  • 動物が大量に摂取すると毒性を示す
  • さまざまな土壌条件に対応している
  • 種子が大量にできる
  • 風散布型種子
  • 単為生殖たんいせいしょく(一般には有性生殖する生物で雌が単独で子を作る)

 

というわけで、謎の植物の正体は Alstonia macrophylla(Devil tree) で、ハワイではなかなか有害な外来種だということがわかりました。

今後種子を拡散してますます生育地を広げる可能性もあるので、この木は伐採することに決めました。

代わりにおいしいフルーツをつける果樹を植えるぞ〜!